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フライ・ライン
FLY LINE

 フライライン(以下ラインと略します)は、フライフィシング特有のものです。“LINE”ですから“釣り糸”といえなくはないのですが、機能的には「オモリ」や「釣竿」の役割をも有しています。他の釣りで、このラインに似たものは日本の毛バリ釣りで使われる「テンカラ・ライン」ぐらいのものです。しかし長さが全く違い、テンカラ・ラインはせいぜい5〜6mですがフライラインは25m以上もあります。つまり全くの別モノですが、似ている点はといえば先端部の形状です。この部分が先細り(テーパー)になっている点は共通しています。この形状は「力の伝達効率」という点でたいへん優れており、「漏斗(じょうご)」と同じように“(力が)漏れにくい”ものです。それゆえ、どちらのラインもフィニッシュ時点で、きちんとターン・オーバーするわけです。 しかし20mどころか7〜8mのラインを伸ばすには、そのテーパー構造だけではとても無理です。それを可能にするのが「重量」です。これがオモリの役割を果たし、ロッドを曲げて長いラインを伸ばす(飛ばす)だけのパワーを作り出すわけです。この重量によってラインは段階的に区分がなされ、それが「番手」で表示されます。軽い順に「#0(ゼロ番)」から始まり、最も重い「#15」までありますが、通常の一般渓流で多用されるのは#3〜#5、湖などでは#6〜#8、そして大河川や海などでは#10以上が一般的です。
 余談ですが、500年前の英国におけるフライフィッシング創始時代、ロッドは18ftもありましたがラインは6m程度でした。リールがなかった時代ゆえの“必然的な長さ”ですが、興味深いのは、そのラインが(すでに)テーパー構造だったという点。馬素(ばす)といわれる馬の尻尾の毛を段階的に縒ってテーパー状にしたもので、リールがない点にしろラインやロッドの長さといい、全体のシステムは日本の和式毛バリ釣りにソックリ。そのシステムをオランダ人が日本に伝えたという説があります。

 
[スペック表示]
  [番手(重量)]
 ラインのパッケージには5つの要素が表示されています。大文字で表記されている「形状」「番手(重量)」「機能」の3つが特に重要で、キャスティングやフィッシング自体に大きな影響を及ぼします。ラインの番手は先端から9mまでの重量で決定されます。「AFTMA」なる国際的機関によって決められたもので、たとえば「4番」なら「7.8g」、「8番」なら「13.6g」です。誤差はプラスマイナス約0.5〜0.6g以内という厳密なものです。1番違うごとに1.3g〜1.6gの違いがあります。
 
[形状]
 
 ラインは先端から3〜4mまでテーパー状(TAPER)」になっていますが、前後ともそうなっているのが「ダブルテーパー(DT表示)」、片側のみが「ウエイト・フォワード(WF表示)」です(左写真)。すなわちDTは前後対称形状です。それに対しWF(通常のWF)は、先端から10〜12mあたりまではDTと全く同一ですが、その直後からテーパー状になって(バック・テーパー)細くなり後端までその細さのままです。12〜15m以上のラインを出して中・遠投するならラインが細いWFのほうが上ですが(空気抵抗などの抵抗が少ないため)、10m以下のレンジならどちらも同じ。DTは前後が使えるため経済的ですし、また仮に15m以上を着水させてライン・メンディングなどを行う際、細いWFよりも操作がしやすいというメリットがあります。右は「シューティング・ヘッド・テーパー(ST表示)」で、全長は9〜12mと通常のDTやWFの1/3〜半分以下です。その後端にひじょうに細い「シューティング・ライン」を50〜100m(以上)結び使用。25m以上の遠投向きのラインです。
 
[テーパーの種類]
  [材質や太さ・内部構造]
 テーパー構造は一様ではありません。モデルによって様々でパッケージにデザイン・フォーミュラを示した製品もあります(左写真)。特にウエイトフォワードの場合はそうです。先端のテーパー(フロント・テーパー)のみならず、バック・テーパー(リア・テーパー)もしかり。さらに、その中間の部分(ベリー部)の長さも様々。しかも同一モデルでも番手によって微妙に長さ(比率)を変えたものもあります。対象魚はむろん、遠投性やアキュラシー(投射正確度)精度、円滑なライン処理や風への対応などなど、個別性能をより高めることを意図すれば自ずとそうなります。率直にいって“通常のWFライン”でも充分ながら、もし、よりこだわりたいとなるなら、各社のカタログをぜひ。この点は材質や太さ、またその内部構造も同様です。同じフローティングでも内部構造や太さは微妙に違い、それが浮力はもちろん飛距離にも影響し一長一短となります。材質もしかり。硬質のほうが飛距離面では上ながら巻き癖はつきやすいなど一長一短。これらも詳しくは各社のカタログを(右写真)。とても解説しきれるものではありません。それほど種類が豊富ということです。
 
[機能]
 
 簡単にいえば「浮く」か「沈む」かです。浮くタイプが「フローティング・タイプ(F表示)」(左写真上)、沈むタイプが「シンキング・タイプ(S表示)」(左写真下)です。写真中央は「フローティング/シンキング・タイプ(F/S表示)」で先端から1.5〜4mがシンキング機能をもち(すなわち沈む部分の長さによって4種ほどあります)、それ以降はフローティング機能をもちます。つまり先端だけが沈むもので、そのため「シンク・ティップ・タイプ」ともいわれます。Sタイプ、F/Sタイプともに沈下速度(シンクレート)によってさらにいくつかのタイプがあり、秒速3〜6cmと最も遅い「タイプ・」(インターミディエイトとも呼称)から秒速15〜18cmと最も早い「タイプ・」までがあります。なお、シンクレートはパッケージに必ず表記されています(右写真)。
 ラインが沈めば当然フライも沈みますので、Sタイプは主に湖や大河川などの中層から深層に潜む鱒を狙う際に用いられます。通常の渓流域でも深場を狙うこともありますが、その場合はFタイプで充分。フライを深く沈めたい場合は「シンカー(オモリ)」を使用します。“それなら湖でもシンカーを使えばいいのでは?”と思うでしょうが、シンカーをつけるとキャスティングがひじょうにやりづらくなりますので、湖など中・遠投を前提にした場合は無理。ラインの機能で沈めるというわけです。ちなみに「F/Sタイプ」も重量が先端に偏っているためキャスティングは相当にしづらいもの。15〜20m以内が限界です。
 
[ユニフォーム・シンク・タイプ]
 
 シンキング・タイプには、「ユニフォーム・シンク」ないしは「ステディ・シンク」といわれるタイプがあります。通常のシンキング・ラインは水中で、たわみがちになりますが、このタイプは直線状に平均して沈みます(右写真)。直線状になると魚信(アタリ)がひじょうに取りやすいうえ、合わせも先端に伝わりやすくなるためメリットは大。たわんでいると一旦直線状になるまで魚信はロッドに伝わりません。合わせ面でも同じ原理が働きますので、合わせが遅れる結果となります。ただし、通常のラインより少々キャスティングが難しいという難点があります。「F/Sタイプ」ほどではありませんが、一応ご留意のほど。
 ちなみに写真のラインは形状が「ST」。長さは10m。STラインのメリットのひとつは、フォルス・キャストは短めでもシュートの際の飛距離が飛躍的に増すという点です。ですから背後にブッシュ帯などの多い日本のフィールドでは使い勝手がよいもの。DTライン(やWF)を適度な長さにカットして“ST風”にする方も多いようですが、STは後端部もテーパー状になっています。“DTカット”だとテーパーは無理。この差がキャスティング面にはっきりと出ますので、やはり専用のSTラインを使ったほうがよいと思います。
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