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ストラグラー
STRAGGLER

 
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 「ストラグラー(STRAGGLER)」とは、『羽化や飛翔に失敗した状態(個体)』、すなわち一般的にいう「落ちこぼれ個体」のことです。もちろん、イマージャー必ずしもイコールではありません。多いことは事実ながら、完全なるダンやアダルトでもストラグラー化する個体は続出します。写真[1]は、ナミフタオカゲロウのダンです。水面を流されていますが、羽化自体には成功し、いざ飛翔しようして飛び立ったまではいいのですが、飛翔力不足に加えて風の影響をモロに受け水面に落下したものです。再度飛翔する可能性がなくはありませんが、脚先やボディが水面の表面張力を破ったりしていると、まず困難。水表面を一旦破ると表面張力は逆に粘性をもつため(毛管現象が作用)貼りついてしまいます。“水面に囚われた状態”という点から「トラップド(TRAPPED)」といわれますが、[2]はまさにその状態の小型のカワゲラです。もがけばもがくほど沈みますからトラップド度合いはより高まります。
 
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 写真[3]はオオマダラカゲロウの「スペント・ダン」です。トラップド状態が進むと、やがては羽翅を広げてスペント化。絶命寸前の状態です。ちなみに上に乗っているのはアメンボ。水生昆虫の天敵で体液を吸います。[4]は完全に絶命したアカマダラカゲロウのスペント・ダン。ちなみに水底に黒い影が映っていますが、これは水面とウイングやボディが接することによって生じる「ライトパターン」なる光学的現象によるもの。水中から見ると、この光学現象はたいへん目立つため、かような状態の個体は捕食率がひじょうに高くなるものです。これはストラグラー全般に共通した点。程度の差こそあれ、みな一様に水面を破るため、その光学的現象が目立つようになるからです。詳しくは『フライ学-水中からの見え方』をクリックして下さい。
 
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 もちろん、全ての個体がスペント状になるとは限りません。横倒れ状態になる個体も多発します。トラップド状態で、もがき羽ばたくうちに片側のウイングが水面に囚われてしまうことなどザラ。写真[5]は、その状態。身体も沈み溺れた状態ゆえ「ドラウンド・ダン」などともいわれます。写真[6]は羽翅が変形してしまった個体。かような個体を“クリップル(CRIPPLE)”などと呼称し、同名のパターンもあり日本でも結構頻繁に使わていますが、個人的見解では不適切用語かと思いますので、少なくとも私や周囲は使用しません。“メイフライ・ストラグラー”で充分かと思います 。
 
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 ダンやアダルト以上に、ストラグラーになりやすいのがイマージャーです。そもそもイマージャーの項で解説したスティルボーンもツイストウイング・イマージャーもショートウイング・イマージャーもほとんどが“すでに”ストラグラー化していますし、スペントウイング・イマージャーなどストラグラーそのものです。ショートウイング・イマージャーには、その状態から完全羽化する個体も多いものですが(イマージャーの項の写真[9]の個体は無理ですが)、スティルボーンもツイストウイング・イマージャーもまず不可能です。ストラグラー化した個体は水面のみならず、水面直下を流される個体も多いもの。水面とはまた違った意味で視認しやすく捕食もしやすいものです。ゆえに飽食されます。
 写真[7]も[8]もライズする鱒の胃内容物。[7]はユスリカのピューパが飽食されていますが、羽化のために水面にぶら下がっても表面張力を破れずにそのまま漂い続ける個体、すなわちストラグラーは続出します。表面張力は意外に強い力です。ましてや1cm前後の水生昆虫にとってはまさに障壁。破れることのほうが不思議なくらいです(とりわけ水質のよい流れは“強力”)。ちなみに写真[7]の右上はユスリカのスティルボーン。脚と羽翅の先端がシャックに引っかかりユニークな形状になっていますが、ユスリカはかような形態になる個体が多いものです。
 [8]は、ツイストウイングないしはスペントウイング状のイマージャー、それも完全にストラグラー化した個体が飽食されています。かような個体は水面に絡むか水面直下を流されやすく、それも相当数が一斉にです。鱒がかような状態の個体に注目して捕食しだすと水面上を流れる個体は無視されやすいものです。
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