![]() |
![]() |
|
海の近くに住んでいる。 波も静かで気持ちのいい午後、その穏やかさとは裏腹に心がざわつくときがある。 家出がしたい。 何が不満な訳じゃないが、男は時にそういう衝動にかられるのだ。 わかるでしょ?(笑) 以前から密かにあたためていた計画が頭に浮かぶ。 家からすぐ近くに小さな岬があり、そこにはカヤックでしか上陸できない浜がある。 そこで一晩をすごそうという壮大なるご近所家出。 そうと決めたら行動は早い。冷蔵庫の中からめぼしい野菜やソーセージ、調味料少々、小麦粉もあれば便利だ。おっ、ビールを忘れちゃいけないぜ。できればバーボンもね。 こんな風にかき集めた食料とハンモック型のテント、シュラフなんかを防水バッグに詰め込み、カヤックの前後のハッチに振り分けていく。 カヤックは積載容量がそう多くはないので、なんでも持っていくわけにはいかない。 いま流行りの仕分けが必要。 最後まで悩んだラジオは置いていくことにした。 重たいカヤックを浜まで運び、コックピットにすべりこむ。 おもいついてからここまで1時間強。 まだ十分に日没には間に合いそうだ。 近所のおばさんに「あら、お出かけ?」と声をかけられるものの、まさか家出ですとも答えられず、曖昧なスマイル。 漕ぎ出して30分足らずで目的の浜に上陸した。 めっぽう近いが紛れもない無人島。 火を熾し、テントを設営して、飯をつくる。 一人の食事はあっという間に終わり、陽もとっぷりと暮れお酒をちびり。 もう寝ること以外、やることがない。 ラジオを持ってこなかったことを後悔しながら、酔いにまかせて歌など歌う。 空にはたくさんの星が輝き、それほど遠くはない場所からバイクの音がきこえている。 テントから顔を出したときには東の空がうっすら明るくなっていた。 冷めたコーヒーをすすり、すばやく荷物をまとめ、カヤックに押し込んで出発。 あれよ、という間にいつもの浜に到着。 家に戻るとまだみな起きたばかりだ。 素早くシャワーを済ませて何事もなかったように食卓につく。 話したいことは山ほどあるんだけど、なんだかちょっと気恥ずかしいんだな。 すると娘から 「父ちゃん家出どうだった?一人で寂しかった?」 「いや、実はね…」 半日家出は人間関係や日常生活をリフレッシュしてくれます。 コツはあまりおもいつめずに出発することとすぐに帰ってくること。(笑) 目下、次なる家出のプランを妄想中。 |
|
||||||||||||||||