黙々と登って、登って、ひたすら登って、やっと頂上にたどり着いたと思ったら、それまで一緒に走ってきた40代中頃と思わしきその女性は、さっさとサポートカーに乗ってしまった。どうやら、マウンテンバイクで走るのは登りだけ。下りはクルマで、ということらしい。
  これはイタリアの山岳地帯・ドロミテでマウンテンバイクツアーに参加したときのひとコマだ。その後も海外のいろいろな自転車ツアーに参加したが、同じような例はめずらしくない。
  下りの爽快感を味わうために、頑張って登る。少なくともボクは、マウンテンバイクの楽しみ方に、そんなイメージを持っていた。不思議に思って先の女性に聞くと「登りこそが爽快だと思うわ。気持ちよく汗を流していくうちに、ずっと上に見えていたところが近づき、そしてスタート地点が今度はずっと下に見下ろせる。私は自転車のそんなところが大好き」といって笑った。
  彼女と別れ、ボクはそのままテクニカルなシングルトラックのダウンヒルを楽しみ、泥だらけでホテルにたどり着いた。そこで、一足先にホテルに戻り、シャワーを浴びて、さっぱりした彼女を見かけた。早速、山頂にたどり着いたことを祝って乾杯。彼女は「走り終わった後のビールがおいしいのも登りのいいところね」とつけ加えて再び笑った。
  そもそも、マウンテンバイクにはたくさんの軽いギアがあるので、登りではそれを使えばいい。おしゃべりしながら自分のペースで登れば、決してつらくはないし、実はその方が体脂肪燃焼に適した運動強度だったりする。下りのときには見えない景色も、登っていれば見ることができる。
  この登りの楽しさは、どうしたら人に伝わるのだろうか? マウンテンバイクガイドのボクは「登り」といわず「体脂肪燃焼区間!」といい、先頭で極力ゆっくり走ってみる。すると「登り=ツライ」というイメージが、格段に少なくなるから不思議だ。
  無印良品キャンプ場のマウンテンバイクコースにも、距離と標高差の差こそあれ、登りがある。ゆっくりしたペースで構わない。みなさんも、ぜひ「登り」を楽しんで、おいしいビールを一緒に楽しみましょう!
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1966年飛騨山中に育つ。「やまみちアドベンチャー」を主宰し、東京の自転車観光ツアーや、周辺の里山MTBツアーでガイドをしている。自転車に関する著書多数。無印良品津南、南乗鞍両キャンプ場のMTBコース設計者でもある。アメリカで3年のガイド経験を積むとともに、チベットやネパールなどにも毎年轍(わだち)を残す。
 
やまみちアドベンチャー
http://www.yamamichi.jp/


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