無印良品キャンプ場 外あそび
どこにいたって気持ちよく感じる“元” いつも身体のなかで流れている景色 村石太郎◎編集者・ライター No.020
 「荒野」
 身体のなかで、いつも流れている景色。24時間眠らぬ太陽、青すぎる空、澄みきる水流、無の音、孤独、陶酔とアドレナリン。極地ではない、野生そのもの。たまに出会う人々の笑顔。ほかにはなにもないが、それらすべてがある。第2の故郷であり、ぼくの人生を完璧に変えてしまった場所。それがアメリカ大陸最北の山脈・アラスカ州ブルックス山脈である。
 東京の雑踏のなかを歩いていたって、ぼくのなかにはブルックス山脈の風が流れている。だから、いくら人が多くても、いくら乱雑に音やモノが溢れていても、少しも居心地の悪さなんて感じない。もともとが江戸っ子だからゴチャゴチャとした景色は、ぼくの性格にぴったりなのかもしれないのだが。
 日本の山、川、海を旅しているときも、その思いは変わらない。アラスカと同じ自然はないけれど、それとは別の自然。ここでしか味わうことのできない柔らかく、包み込まれるような日本の自然は、ほんとうに美しい。

 ある人物がいっていた。
 「すぐそこにあって、どこにでもあるような自然をぞんざいにして、珍しい、時間をかけて移動しないと訪れることができない自然だけを特別視して区別する。今その環境と出会っているのに、珍しい、他に類を見ないといった人間の価値観で区別してしまうことは悲しい」、と。
 ぼくは、この言葉にハッとした。
 身近な自然を尊むためにも、旅に出よう。不景気やら、臆病っ気やら、忙しいという口癖とともに縮こまっていてばかりじゃぁつまらない。世界は狭くなった? それは本当だろうか? 君は確かめたのか? ぼくはそうは思わない。世界は広い。頭の知識ではわかったつもりになっているが、世の中はまだまだ知らないことで溢れている。
 アラスカの荒野へ、アンデスの山中へ、ナミブの砂漠へと、いきなり旅立てとはいわない。いつも見ている河原へ、気になっていた岬へ行ってみよう。いや、キャンプ場だっていい。そこには、きっと驚きが待ちかまえているから。そこには、きっと昨日まで知らなかった景色があるのだから。

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村石太郎
フリーランスライターとしてアウトドア雑誌で執筆する傍ら、外国人に広く日本の自然やアウトドアを紹介する「Outdoor Japan Magazine」副編集長を務める。
プライベートでは、96年よりアラスカ・ブルックス山脈の原始河川を毎年1本づつ下り続けている。

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