 |
僕はキャンバストップの車に乗っている。屋根の一部がカーテンになっていて、スイッチひとつで部屋の窓を開け放ったように車内と外が一体化し、風と太陽が入ってくるしくみだ。昔からこのキャンバストップが大好きで、車えらびの優先順位のトップでいつづけている。
車だけではなく、僕の外への欲求は生活のすべてに及んでいる。ちょっと暖かくなれば、いや、冬でも家の窓はどっかしら開けておく。列車に乗っても窓の近くに陣取りたいし、高所恐怖症にもかかわらず飛行機は窓側のシートを所望してしまう。
酒場はオープンエアが基本なのは当然で、それが無理ならせめて入り口は開けておいてほしい。それもダメなら、窓をうんと大きくとってください。コンサートは、屋外ライブ以外行かなくなってずいぶん経つ。
なぜこんな人間になってしまったのか。閉所恐怖症の気があることはもちろんだが、密室がこわいというより、どうやら外のようすを逐一知っていないと不安になるタチのようだ。外にいると気持ちがいいという無邪気で原始的なキモチは自分にはなく、外界=他者から取り残されるのを恐れる現代人の焦りみたいなものが、僕を外へ外へと向かわせているように思える。
半身を外界にさらす益荒男なオープンカーではなくキャンバストップを好むのは、車という文明に守られながら風やら光をダイジェスト的に楽しみたいというムシのいい話だし、外で呑む酒をおいしく感じるのも、背後に店という社会的存在があることに安心を覚えているからにちがいない。僕の屋外志向は、文明の中から自然をのぞき見て満足するスタンスに立っているのだった。
などとリクツっぽく考えると、自分がずいぶん小さい人間に思えてきたけど、そんな自分がきらいではない。今日も小さく外を楽しめる場所を探して、僕は現代社会をほっつき歩く。

|
 |


 |
 |
| 1964年東京生まれ。自動車や自転車をはじめとする乗り物関連を中心とするフリーランスライター&エディター。楽器、カメラ、靴、時計といった「音が出る、重い、手間がかかっている」やっかいな工業製品の話をするのが無類の喜び。 |
|
|