無印良品キャンプ場 外あそび
食ひとつにも文化が隠れています。くらしの工夫から生まれた漬物文化 中水繁藏◎南乗鞍キャンプ場支配人 No.014
 昔、高根村(現:高根町)は山深く閉ざされ地域ということもあり、貧しい村でした。雪の積もる冬だと、村外からは月に一度、呉服屋さんが肌着などを商いしに訪れるだけ。そんな生活条件の厳しい村民が食べるのは保存食のようなものがほとんどで、中でも主となるのが秋に仕込む漬物でした。
 秋になると一家族で食べる一年分の漬物を当座用や冬用、春用、そして菜の種類、塩量別に大きな桶に分けて漬け込みます。当座用には切漬けを使い、春には発酵して酸っぱくなった切漬けを飛騨山村ならではのニタクモジ(流水で灰汁と塩を抜いて鰹のダシと醤油で煮込んだ佃煮のようなもの)にして食べました。皆さんもご存知のタクアン漬けは4月〜7月、赤カブ(赤カブラのみを漬けこんだもの)も同時期、そしてカブの葉の長漬け(赤カブの葉っぱを付けたまま漬け込んだもの)は7月〜9月ごろ。野菜や果物の旬の時期とは異なりますが、漬物にもモノによって「旬」があったのです。
 こういった「漬物文化」があるため、高根には他の地域に比べると漬物通(ツウ)が多いのかもしれないですね。一食でどんぶり鉢一杯の漬物を食べるほどです。子どものころ、学校帰りに近所のおばさんがおやつにくれた赤カブの味は今でも忘れません。砂糖菓子なんてものはもちろんなく、お茶菓子として漬物が出る時代だったので、子どものおやつも漬物だったのです。
 現在は交通の便が発達したおかげで食物が一年を通して手に入るようになり、昔ほど漬物を作らなくなりました。しかし、最高の味を知っている高根の人々には、今でも家庭で丹精をこめ、昔ながらの製法で作り続けている方がたくさんいらっしゃいます。わが家でも、貧しかった昔を思い起こしながら毎年何種類も漬けています。貧しい中にも食の豊かさがあったのです。
 高根村の人々は、雪に閉ざされた中でただ冬が過ぎるのを待っていたわけではありません。夏に酷使して疲れてしまった農機具の手入れをしたり、すぐに擦り切れてしまう藁草履を何十足も編んだり、前の年に山で切って乾燥させ寝かせていた原木から薪作りをしたりしていました。そういった工夫の中から独自の文化が生まれたのです。
 食を楽しむあそびは数多くあります。しかし、自分たちで工夫をし、見つけた食を味わうことこそが、ほんとうの豊かな食あそびではないでしょうか。

INDEXへ戻る

中水繁藏
南乗鞍キャンプ場支配人。飛騨に生まれて60余年、郷土の伝統や文化を知る生粋の飛騨人。
大自然で生活する術にも精通しており、「秋の感謝祭」で鍋の材料となるイノシシは、毎回自ら捕獲している。


無印良品 無印良品キャンプ場 良品計画企業情報
copyright 2006 MUJI Campground