無印良品キャンプ場 外あそび
ちゃんと感じたこと、ありますか?自然が耳に届けてくれる音 山本修二◎フリーライター No.010
 そっと耳を澄ました時、どんな音が耳に入ってくるか?野山に出かけた時、何もしないで、ただただそこに身を置き、流れる時間と音だけを受け入れる。最近、そんな過ごし方を贅沢と感じるようになった。
 人為的なノイズではなく、自然が奏でる音。しかも自分が予測もしなかったような音色がそっと耳に届いたとき、心の底から爽やかな気持ちになれる。
 そんな野の音を初めて意識したのは、河川敷にある5月のサイクリングロードでのこと。ペダルを漕ぐ足を休め、ボトルの水を飲み、ホッと一息ついた時、天高くさえずるヒバリの声が思いがけず耳に飛び込んでしまった。「なんて美しい声なんだろう。それも東京の青空の下で」と心洗われる気持ちになった。
 それからというもの、静かなキャンプ場の木陰にフォールディング・チェアで陣取り、目をつぶって風の音に耳を澄まして過ごしたり、シュラフの中でテントやタープを叩く雨音に酔いしれたり、野の音を耳が求め楽しむようになった。
 アウトドアにおいても、情報の多くは目から入ってくる。遠い山並に沈む夕陽や鮮やかな虹など、それは時に印象的なものだ。しかし、視覚以外の音や臭い、肌に伝わる空気の温度や湿度など、あらゆる感覚を研ぎ澄まし受け入れることで、自分がその地(自然)の一部になったような錯覚をおこすことがある。そんな時、きまって自然の懐の深さに、陶然となる自分がいて、それを気づかせてくれた自然の使者に感謝の気持ちが湧きあがる。
 自然を神と崇拝するハワイの人たちは、そんな万物に対する感謝の気持ちを「アロハ・スピリッツ」と呼ぶ。しかし残念なことに、われわれの言語には、しっくりくる言葉がない。そんな言葉探しを口実に、仕事を放り出し、野へ山へ川へ、また小さな音を聴きに行ってしまうのだ。

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山本修二
1963年東京生まれ。少年時代はBMX選手として全国を転戦。81年に雑誌の企画でMTBと出会う。以来、MTBに魅せられ、アメリカ、カナダに遠征し、本場の遊び方と走ったあとのビールの味を覚えた。現在は、フリーライターとして、ゆるめの自転車生活の愉しみ方などを提案している

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